シリコンバレーのエンジニアに関するインタビュー

先日、知人経由で日本の民間シンクタンクから「シリコンバレーのエンジニアについて調査しているので話を聞かせてくれ」という依頼を受けた。とは言っても自分はまだこっちに来てから半年なので、シリコンバレーの裏まで知りつくしているわけではない。要望に答えられるか微妙だったので、こちらで既に7年ほど働いている友人を誘って一緒にインタビューを受けて来た。某シンクタンクの人が調査しているのは、なぜ日本でシリコンバレーのような成功例がなかなか出ないかという点。で、その人の仮説ではシリコンバレーではエンジニアに対するトレーニングが日本とは違って素晴しい仕組みがあるのではないかと。どうやらエンジニアの技術力に差があり、その差はトレーニング制度にあるのではないかと思っている様子。が、友人も小職もその仮説は違うんじゃないのと思わず首をかしげる。特にソフトウェア開発に限ってしまうが、個人的にはシリコンバレーが日本のIT産業より元気と勢いがある理由は、大きく分けると2つほどあると思う。1つ目は、シリコンバレーがエンジニアにとって凄くフレンドリーな環境だから。2つ目がシリコンバレープロダクト•マネージャがきっちり仕事をするから。まず最初のエンジニア•フレンドリーだが、まず単純に給与水準が違う。仕事をする上で給料が全てではないだろうが、優秀な人材を世界中から引き寄せる大きなインセンティブになることには間違いない。まぁ実際には税金が高かったり生活コストが高かったりするが、額面だけ見るとやっぱりそれだけの金額を日本でエンジニアとして貰うのはなかなか難しいのだろう。ちなみにシリコンバレーの給与水準に関しては渡辺さんのブログを参照するといろいろと面白い。

http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/03/post_4.html
http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/04/post_6.html

給料以外にも、仕事の環境は素晴らしい。まぁ物理的な土地の広さも関係あるだろうが、オフィススペースも広いし快適。また、労働時間も差がある。ちなみに、日本にいたときは夜遅くまで働くのは美徳とされていたが、こちらではまったく美徳としては見なされない。日本にいた時から夜間労働賛歌は薄々何か変だと感じていたが、やっぱり同じレベルのアウトプットだったら早く終わらせてさっさと帰る人の方ができる人であり、そのように評価される。

2つ目はプロダクト•マネージャの存在。コンシューマー向けのweb2.0ベンチャーは当てはまらないかもしれないが、ある程度規模の大きいエンタープライズ向けのソフトゥエアを作るには、シリコンバレーでは必ずプロダクト•マネージャという人がデベロッパー達とCo-workする。プロダクト•マネージャは顧客やマーケットと常に接点を持ち、製品の要件やトレンドを整理し、きっちりスペックにまで落とし込むのがメインのミッション。当然エンジニアとコミュニケーションするために最低限の技術力も必要。元々エンジニアでMBAを取得した後にプロダクト•マネージャになる人も多い。彼らが製品戦略を決めて、"売れる"ソフトウェアをデベロッパーとともに作って行くのである。日本では技術のあるエンジニアはいても、このプロダクト•マネージャという職種がきっちりと確立されていないのではないだろうか?技術的に優れていても売れるとは限らないのが、エンタープライズ向けの製品の奥深いところ。

ということで、まずは日本企業ももっとエンジニアに給料払ってまっとうな扱いをすることをすれば、少しは元気になるのではないだろうか。後はエンタープライズ向けのソフトウェア作るならプロダクト•マネージャもきっちり養成しないと世界で売れるモノを作るのは難しいのではないだろうか。と個人的に思う。