アメリカ大統領選挙:投票する前に知っておくこと

いよいよ火曜日がアメリカ大統領選挙の投票日である。今日のSan Francisco Chronicleに選挙に関する興味深い記事が。タイトルはWhat To Know Before You Vote。「投票する前に知っておくと」ということでオバマとマケインの立ち位置を経済危機対応、税金、エネルギー政策、イラクおよびアフガン、健康保険等々、項目毎に纏めた形になっている。その中で経済危機対策と税金に関して目を向けて見てみると、二人の対立軸がよく見えて面白い。マケインは中道派ではあるが一応アメリカ保守、つまり、

  • 基本は市場任せ
  • 小さな政府
  • 規制はあまりしない
  • 増税も好まない。

一方オバマはもう少し現実的。

  • 市場に任せっきりではだめで政府による規制も必要。
  • 増税も一部(つまり金持ち)に対しては止むを得ない

というスタンス。オバマの「低中所得者は減税して、金持ちには増税」という発想は、(いい悪いは別にして)累進課税のきっちりした日本式資本主義の中で生まれ育った小職には別に違和感ないが、どうやら多くのアメリカ市民には好ましくない案のようである。なぜならアメリカでは超楽観的な人が結構多く(別のいい方をすれば、アメリカンドリーム健在)、今は低所得でもいつか自分が$250,000以上稼げるようになると真剣に信じているのである。よって今貧しくて減税してもらった方が得なのに、将来自分が金持ちになったことを考えてそれを否定するのである。。今回の選挙で一躍有名になったJoe The Plumberオバマとのやり取りの中で、オバマの税金案はアメリカドリームに反するものであると指摘している。

Wurzelbacher suggested that Obama's tax plan would be at odds with "the American dream." Wurzelbacher stated, "I'm getting ready to buy a company that makes 250 to 280 thousand dollars a year. Your new tax plan's going to tax me more, isn't it?"

マケイン陣営はこのオバマの税金案を"Redistribute wealth(富の再配分)"と言ってオバマをすっかり共産主義者扱い。今更ながら(アメリカ式)資本主義が相当深く米国に根差していることを実感した。個人的にはオバマの言っていることの方が真っ当だと思う(経済、税金以外のポイントでも)のでオバマに頑張ってほしい。

ちなみに、記事の内容は具体的には以下のような感じ。


Economic Crisis Relief (経済危機への対応)

  • Obama:
    • To give business an incentive to create new jobs, would offer a tax credit of $3,000 per new hire in the U.S.

新規の雇用創出を促すために、米国で一人新規に採用する毎に$3,000の減税を施す。

    • Would cut the capital-gains tax on small business investments.

中小企業に対する投資に関してキャピタルゲイン税を減税する。

  • McCAIN:
    • Would cut the capital-gains tax on stock profits from 15% to 7.5% for two years and allow tax payers to deduct up to $15,000 in stock losses in 2008 and 2009 (the current cap is $3,000)

今後2年間、株式譲渡益にかかるキャピタルゲイン税を現行の15%から7.5%まで減税する。2008年度と2009年度の株式譲渡に伴う損失を$15,000まで控除することを認める。(現行は$3,000まで)

  • Bottom Line (結論):
    • Obama believes in tighter government regulation of the economy, while McCain generally favors market-based solutions.

オバマは経済に対する政府の規制を強化することが必要と信じている。一方マケインは全般に市場に任せるソリューションを好む。

    • Both candidates supported Congress's recent $700 billion bailout of Wall Street.

両候補者は議会の最近の$7000億のウォールストリート救援策を支持している。

Taxes (税金)

  • OBAMA
    • About 95% of working couples would get a $1,000 tax cut.

およそ95%の世帯に対して$1000の減税を施す

    • Families earning more than $250,000 would see their taxes go up.

世帯収入が$250,000越える場合は増税となる。(訳者注:上でも述べたようにアメリカでは超楽観的な人が多く、今は低所得でもいつか自分が$250,000以上稼げるようになると真剣信じているのでObamaのこの増税ポリシーはアメリカ保守派の人に受けが悪い。。)

  • McCAIN
    • Wants to make permanent all Bush-era tax cuts, except repeal of the estate tax, which would be reinstated at 15%, with a $10 million-per-couple exemption before any tax kicked in.

ブッシュ時代の減税を「相続税の撤廃」は除いて恒久的なモノにする。(なおマケイン案では相続税は15%の税率でちなみに夫婦あたり$10億になるまでは相続税はかからない)

    • Would reduce the corporate income-tax rate to 25% from 35% and suspend income tax on unemployment benefit.

企業の法人税を35%から25%に減税する。失業手当給付金に対して所得税を課すことを一時停止する。

    • Bottom Line (結論)

Obama would cut taxes for low- and middle-income Americans and raise taxes on the wealthy. McCain would cut taxes across the board, mostly benefiting upper-income taxpayers.

オバマは低中所得者のアメリカ市民の税金を減税し、金持ちの税金を増税しようとしている。マケインは全体的に減税をすることを考えており、結果としては高額所得者に有利な税制となる。