要約(1):ソフトウエア企業の競争戦略

hyoshiok氏の
http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok/20050321#p1
を経由して知ったのですが、ソフトウエア企業の競争戦略という本(正確には、原書のThe Business of Software)を読みました。

ソフトウエア企業の競争戦略

The Business of Software: What Every Manager, Programmer, and Entrepreneur Must Know to Thrive and Survive in Good Times and Bad

自分もソフトウェアのビジネスについて
http://d.hatena.ne.jp/hidekoji/20050203
のエントリで漠然と思うところを書いていたのですが、本書はMITのMicheal A. Cusumanoによって整然と体系だって説明されていて、引き込まれるように読みました。

折角なので、何回かに渡って(独断と偏見かもしれませんが)本書のポイントと思しき点についてコメントを書こうかと。

興味深かった章

2. Strategy for Software Companies: What to Think About
4. Best Practice in Software Development: Beyond the Software Factory

まずは数回に渡って2章の、ソフトウェア企業の戦略:何を考えるべきか

についてのコメント

2章にはいくつかのキーとなる概念がでてきます。

ソフトウェアビジネスの業態

  • Products Company :製品を売ることがメイン・ビジネスである企業
  • Services Company:サービスを提供することがメイン・ビジネスである企業
  • Hybrid Solution Firms:製品も売り、かつ導入コンサルティングやサポート・サービスといった製品に関連するサービスも提供する企業
Products CompanyとServices Companyの違いは?

ソフトウェア企業は、Products Companyか、Services Companyであるかのどちらかであって、一度に両方にはなれない。*1



Products Company

Services Company

収入源

ソフトウェア・ライセンス

基本的には人月等の単価X数量

コスト

開発時にかかるR&D(比較的大きいがかかるのは一度)
出荷時にかかるCD-ROM等のシュリンクラップ (低コスト)

人件費(シュリンクラップと比較すると圧倒的な高コスト)

収益性

上記理由により一度開発してしまえば、規模の経済が利いてくるので高い

収益を伸ばすには人を投入する必要があるので、規模の経済は利いてこない。よってProducts Compnayよりは低収益

成功のしやすさ

R&Dを回収できるほど売れる製品を作るのは非常に難しいが、一発あてると大きい。

参入はしやすいが、中国、インドといった恐ろしく安い人件費の企業との競争等が見込まれるので、何か差別化できる点がないとジリ貧になる可能性が大きい。

ソフトウェア企業のライフサイクル

SAPやOracleなど、Product Companyとして出発した企業は、成熟するにつれHybrid Solution Firmsに落ち着いてきています。これは、新しいマーケットだったり、景気のよいときは純粋に新規ラインセンス料で収益を伸ばせていけますが、マーケットが飽和してきたり、景気が悪くなってくると、既存の顧客からのサポート料といったサービスからの収益によってrecurring revenue(定期的な収益)を稼ぐようなビジネス・モデルにシフトせざるを得ないからです。

なお、日本のソフトウェア企業の雄ワークスアプリケーションに目を向けてみると、

http://ir.worksap.co.jp/

ワークスAPの収益の内訳2004年度

単位:円 (百万)

比率

ソフトウェア

4,914 70%

保守

1,377 19.6%

その他

721 10.4%

と、ライセンスが収益の70%を占めており、ワークスAPがまだバリバリのProducs Companyであることが読み取れます。

次回に続く

*1:Hybrid Solutions Firmsについてはソフトウェア企業のライフサイクルを参照