選択肢が多いのはユーザーにとって嬉しいこと?


生命保険 立ち上げ日誌に「みんなと一緒じゃなくちゃ嫌だ」というエントリーが

http://totodaisuke.weblogs.jp/blog/2007/06/post_2b6f.html

保険代理店の社長が来社。意見交換していた中で印象的だったのが、インターネット経由の情報収集・比較検討・申込みが急速に増えている中、より多くの人が「どれが売れていますか」「他の人はどんなの買ってるんですか」と質問をし、ランキング上位の商品に人気が集中しているという傾向。

本来、豊富な情報が手に入ることで、型どおりではなく自分の好みに合った商品を選べるようになるのがインターネットの特徴だ。いわゆるロングテール。しかし、業界有数の規模であるこの方の話によれば、最近はこれに逆行する現象が進んでいるとのこと。

このようなことが起こっている背景にはもちろん、生命保険の商品選びが複雑であり(ボクはそうは思わないのだが、少なくともそう信じられており)、顧客が自ら自信を持って商品を選ぶことが容易でないという業態の特性もあろう。

しかしこれに加えて、いわゆる「横並び」意識が日本人の特質であるということを、改めて考えてみたい。

このことを意識したのは、留学中の修学旅行、いわゆるジャパン・トリップ。140名の学生を連れて日本を周ったが、彼らは驚くまでに集団行動ができない。時間通りに集まることはできないし、整列していても列はすぐにぐちゃぐちゃになる。そもそも、皆と同じ行動をするという行動様式に慣れていないのだろう。

これに対して、我々は幼稚園の頃から前習え!ときれいに整列することをカラダにも心にも叩き込まれている。列から少しでもずれることは許されない。身体テストでも、皆で一斉に台に上ったり下りたりするし。これが、我々が意識している以上に、もはや遺伝子的にインプラントされているのと近いレベルで、我々日本人の横並び意識を規定しているように思える(言いすぎ?)。

これを読んで、Barry Schwartz博士による講演

The Paradox of Choice - Why More Is Less - Google Video

http://video.google.com/videoplay?docid=6127548813950043200


を思い出した。ポイントは「もし自分が探そうとしているものについて良く知っているのであれば選択肢が多い方がよい、しかしながら、よく知らないものについては選択肢が多いと麻痺状態になってしまう。」ということである。

しかもこれは「横並意識」が薄いはずのアメリカ人にも当てはまるのである。例として日本語サマリーされた以下のブログのエントリーを参照してほしい。


選択肢を減らすことの重要性

http://www.geekpage.jp/blog/?id=2007/6/4

選択肢の多さは機能麻痺(Paralysis)を引き起こす

あまりに選択肢がありすぎるために、結果としてどれも選ばない

* ジャムの販売を行った実験
o 24種類のジャムを試食で置いた
o 6種類のジャムを試食で置いた
o 24種類のジャムを置いた方が人々は興味を示した
+ でも、実際に購入した人は6種類を置いたときの方が10倍だった

* 大学での宿題
o エッセーのトピックは30種類から選べるようにした
o 6種類のトピックから選べる方もやった
o 6種類のトピックの方がエッセーの提出量が多かった

* Speed Dating (合コン、ねるとん?)
o 一日でのお見合いの12組を行うよりも6組の方がカップルができあがった

* 401kの選択肢
o ファンドの数を増やした方が従業員が参加しなかった
o ファンドの種類を10個増やすと参加率が2%下がった

* スーパーマーケットでの展示品の数を減らす実験
o 強いブランドが良く売れる
o その店の独自ブランド商品が売れなくなる
o 高い物が良く売れるようになる
o 客はものの種類ではなく、棚に置いてある量を気にする
+ 商品がいっぱいつまれていればそれで良い
o 商品を減らしたことによって、いっぱい買うようになるし、満足するようになる
+ 品数を減らした方が全体的な売り上げは伸びる
o (途中で質問が入り、まだこれに関してはそのような研究事例があるだけで全てにおいてこれが真とは限らないというような事を言っていた気がします)

もし、あなたが探しているものが何であるか良くわかっているのであれば、選択肢は多い方が良いです。選択肢が多い方が、本当に欲しいものが何かをわかるからです。ただし、そのような事はほとんどありません。例えば、車の詳細な機能を全部羅列して買う人はいません。いくつかの基準、例えば安全性などをもとにどの車が良いか選ぶというのがほとんどです。

繰り返しになるが、上の例は横並び意識の薄いはずのアメリカでの話である。

さて、ここで一つ質問。いくらWebでいろいろ情報が取れるからといって「生命保険」は本当に自分が欲しいものが良く分かっている人が購入するものなのだろうか?統計を取った訳ではないが、直感的に違うと判断できるのではないだろうか?そうすると、生命保険を購入する際の選択肢の多さはユーザーにとっては苦痛になっているのかもしれない。

逆を返せば、「生命保険」について、ユーザーがある程度知識を持っている状況を作り出せるのであれば、選択肢の多さはユーザにとってプラスになるのだろう。